たったひとつの冴えない惑星

懐かしのSF小説をネタにしたブログ

福島正実編 海外SF傑作選について

生まれて初めて読んだSF小説小松左京の短編です。

それも結構大量に小学生の時に読みました。

父親の本棚のエコノミストとかいう雑誌に載っていたのですが、小松左京の短編だけ選び出して読んでいたのです。

小学5年生くらいでしょうか。

 

6年生になると自分で安い文庫本を買いそろえていたのです。

なぜか、小松左京には目もくれずこのシリーズを全巻読みました。

 

福島正実編 海外SF傑作選 全9巻

 

1975年から77年にかけて講談社文庫から続々と刊行されたシリーズです。

たぶん、ほとんどはSFマガジンに掲載された翻訳でしょうが、当時はハヤカワSF文庫の体制が整っていなかったので講談社からの出版となったのでしょうか。

初期のハヤカワSF文庫ではこのような企画ものは無く、白背でバローズなどの作品が多かったような気もします。

ちなみに第一巻はエドモンド・ハミルトンの「さすらいのスターウルフ」(1970年)

 

1957年から1974年まで刊行された「ハヤカワ・SF・シリーズ」の終了も関係していたのでしょうか。

その昔はSFの翻訳本と言えばこれと世界SF全集のイメージでした。

創元推理文庫では早川に先駆けてSFの文庫化が進んでいました。

つい最近までは。(今でも?)古本屋にはハヤカワ・SF・シリーズ(全318冊)が並んでいたものです。

このシリーズは本場アメリカのペイパーバックを踏襲したもので、早川としては日本独自の企画に難色を示したのかな?

 

この海外SF傑作選は、さすがは日本に海外SFを紹介した草分け的存在の福島正実さんと思わせるだけの素晴らしい編集の出来です。

40~50年代の最も輝かしい欧米SF短編が網羅されています。

もちろん、版権の関係か「あれ」が入っていれば完璧なのにーという部分も多いですが、たった9冊でSFの全てだ!となっても寂しいですしこの編集の価値が下がるわけでもありません。

 

f:id:dtbbr08:20181230151254j:plain

 

 

目次

 

1、時と次元の彼方から

 

アーサー・C・クラークの「時間がいっぱい」、ロバート・A・ハインラインの「歪んだ家」、ポール・アンダースンの「タイムパトロール

 

いきなりものすごい3作です。名作です。こんなに並べていいんでしょうかw

ハミルトンやアシモフ、レンスターなどの40年代を代表する本格的SF作家のオンパレードです。

ウィリアム・テンやバートラム・チャンドラーなども選ばれました。

 

2、破滅の日

 

人類滅亡テーマのSF短編集です。

クラークの「太陽系最後の日」が長いので全7編です。

ハインラインマチスン、シェイクリーなど大御所が並びます。

 

3、未来ショック

 

近未来SFですが、なにがショックなんだろうと思うくらい別に普通です。

60年代以降の作品と比べるとほのぼの系です。

 

ハインラインの「走れ走路」これは大好きでした。子供のころの夢の未来像。

クラークの「海底牧場」これも素晴らしい。海に憧れました。

アジモフが2編、ブラウン、シェイクリー、マチスンが一編

そしてブラッドベリ―登場。子供の心に沁みました。

 

4、千億の世界

 

人類と異種知生体とのファーストコンタクトテーマ。

SFの最も感動的な瞬間の作品群です。

資本主義圏の作家は好戦的で社会主義圏の作家は協調的です。

当時はそうだったのかもしれませんね。

 

H・ビーム・パイパーという社会主義圏の作家の「創世記」は素晴らしい作品です。

まるで、レムが心を入れ替えて優等生になったような作風ですw

A・E・ヴァン・ヴォクトの「黒い破壊者」!名作中の名作!大傑作とはこの作品のためにある言葉です。

f:id:dtbbr08:20181230151355j:plain

5、人類を超えるもの

 

50年前後に大量に書かれたミュータントものの作品集です。

当然のごとく、フィリップ・K・ディック登場。「にせ者」

ウィリアム・H・シラスの「アトムの子ら」、レスター・デル・リイの「愛しのヘレン」など渋い作品が続きますが、白眉の作品はゼナ・ヘンダ―スンの「アララテの山」でしょう。

カート・ヴォネガット・ジュニアのデビュー作「バーンハウス効果」もあります。

 

6、不思議な国のラプソディ

 

奇妙な味のSF短編。決してファンタジーではないSF独自の幻想世界です。

SFと言うより境界線的作家の作品が多い中で、われらがエドモンド・ハミルトンの「反対進化」が光ります。

ハミルトンの短編はストレートSFが多いです。

 

7、クレイジー・ユーモア

 

フレデリック・ブラウン、ロバート・シェクリイに代表されるユーモアSF集です。

無茶苦茶なものは無く、お上品なユーモアが楽しめます。

 

8、華麗なる幻想

 

タイトルとは裏腹に、ウエルズやヴェルヌ、コナン・ドイルなどの19世紀作家が多いです。

しかし、ハミルトンの名作「フェッセンデンの宇宙」がひときわ輝きます。

カレル・チャペックの「RUR」、エドガー・A・ポーの「メールシュトレームの大渦」という忘れられない名作も。

 

f:id:dtbbr08:20181230151424j:plain

9、ファンタジーへの誘い

 

50年代後半の比較的新しい顔ぶれが中心の短編集です。

オールディス、ライバー、ディック、ラファティ、ルグィン、ビグスビィ、などおなじみの作家のあまり知られていない作品が並びます。

そして、最後を飾るのはあの名編、

ジャック・フィニィの「ゲイルズバーグの春を愛す」

 

10、小学生には厳しい作品もありましたが、

 

ひとつ残らず素晴らしいストーリーに夢中でした。

 

SFは一生読み続けるだろう。

 

当時、そう思ったものです。

 

現在は年に数冊しか読みませんが、小説と言えば8割はSFを読んできたのは福島正実さんのおかげです。

 

この文庫本のシリーズですが、相当発行数が多かったらしく、現在でもアマゾンや古本屋で見つけられます。

プレミアもついていないようなので、古本に抵抗のない人なら読んで見る価値があるかもしれません。

レトロ作品ですので強くお勧めは出来ませんが、本物のセンスオブワンダーがここにはあります。

 

もちろん、その後に編集されたSF傑作集のほうが優れていますが、ここでしか読めない名作も多いのです。

 

SFは短編が主流の文学です。

短編こそセンスオブワンダーの発表場所なのです。